・・・< その4 >・・・

 
もくじ
その1.菌類の仲間であること/地衣類という共生現象
その2.ある地衣類の一日/特殊能力 体の表面から水分を吸収/特殊能力 乾燥しても死なない
その3.葉状地衣・痂状地衣は丸くなる/ゆっくりと成長する
その4.生活史(子嚢胞子による殖え方)
その5.生活史(栄養繁殖)
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生活史(子嚢胞子による殖え方)

lifecycle  

子器にできた子嚢の中で,子嚢胞子が成熟します.子嚢から飛び出した子嚢胞子は,空中を漂い,やがてどこかに付着あるいは落下します.そこで共生藻となるべき藻類と出会うことができれば,地衣化が起こります.それはやがて地衣体へと成長し,子器をつけることでしょう.

(左図のモデルはムカデコゴケ Physciella melanchra)

 

これが基本的な生活史と考えられます.

しかし,じつはこれは,かなりの部分をはしょっています.

子器が,そして子嚢胞子ができるまでを,下に示します.

(モデルはチャシブゴケ属 Lecanora)

子嚢胞子ができるまで

lifecycle    
 

地衣体(1)には,造嚢器(3)や粉子器(2)ができます.造嚢器(3)は,卵にあたるもので,オス・メスで言えば,メスに当たります.これに対して,2の粉子器にできる粉子がオス,精子にあたると考えられています.

造嚢器から伸びる受精毛に粉子がくっつき(3~4,プラスモガミー),核が造嚢器へと移動します(4~5).2核の造嚢器から,同じように2核の造嚢糸が伸びるとともに,だんだんと,子器の形ができはじめます(6~).

子器が十分に発達した状態で(7),造嚢糸の先端に子嚢ができ(8),この中で2つの核が1つになり(9~10,カリオガミー),次いで減数分裂が起こり(10~11),更に分裂し(~12),それぞれの核の周りに細胞壁ができ(13),子嚢胞子へと発達していきます(~14).

子嚢が成熟すると,子嚢の先端が裂け,子嚢胞子が飛び出していきます(15,16).

子嚢胞子は空中を漂い(16)付着した場所に,共生藻となるべき緑藻(17)があると,地衣化が起こります(18).これが地衣体の形になって(地衣体分化),成長していきます.

 

この図は地衣類の生活史を紹介するため原田が作図したもの(文献1,2)を,原田が一部改変して作成しました.

(文献1)原田浩. 1998./ 地衣類の用語解説 その4―地衣類の生殖―./ 日本植物分類学会ニ ュースレター(92): 9-11.

(文献2)中村俊彦・古木達郎・原田浩. 2002./ 校庭のコケ. 192 pp./ 全国農村教育協会,東京.