小学校区の音 概略

    音からさぐる身のまわりの自然環境

  千葉市内の環境の異なる3つの小学校区の音環境の比較

 私たちはふだん目にたよる生活をしているので、耳から入ってくる自然の音はよほど印象的なものでなければ気がつきません。 ところが、生きものの世界では、鳥のさえずりやカエルの鳴き声、虫の音のように、生きるために不可欠なコミュニケーション手段です。私たちも 音を聞くことによって、身のまわりの生きものたちの活動を調べたり、地域の生態系や自然環境の状態を評価したりできるのではないでしょうか。

ここでは1991年5月から1993年4月に録音された千葉市内にある3つの小学校区の音を比べてみましょう。

小学校区には、純農村地域を代表して平山小学校区、新興住宅地を代表して都賀小学校区、東京湾の埋立地につくられたニュータウンを代表して高洲第一小学校区を選びました。


* 調査方法 *

この調査では、各小学校区内の代表的な環境を土地利用の仕方から10地点前後選びました。毎月、原則として晴天が連続した3日間の早朝、 各地点で6分間ずつ、近くで聞こえるはっきりした音の音源を聞き取りました。
千葉市など本州中央部あたりでは、ある地点で聞える自然の音源の90%以上が連続した6分間に出現します。(oba,1994)

同時に各地点の音環境も録音し、後で聞き直して音源の確認を行いました。中央博物館の収蔵庫にはこれらの録音がすべて保存されています。

<およその規模>約400〜500m四方

<およその位置>
千葉市美浜区高洲二丁目の北半分にあたります。北の境は京葉線で、西の境はJR稲毛駅にいたる海浜公園通りです。

<過去と現在の状況>
埋め立てられた新しい場所に計画的に造られた住宅地で、整然とした区画内に小公園やショッピングセンターなどが配置されています。
調査当時は植えられた公園や街路路の木が既に大きく成長していました。

高洲第一小学校区の音を聞く
<およその規模>約1km四方

<およその位置>
千葉市稲毛区作草部町にあたります。南東の境にはモノレールが走り、天台駅・作草部駅があります。都川支流葭川の右岸の台地上とその周辺にあたります。

<過去と現在の状況>
小学校の一帯は、江戸時代の作草部村の範囲にあたり、台地上の畑が大きな面積をしめていました。古くからの村の時代の名残として寺、神社の境内には、近世の庶民信仰の様子を物語る石仏や石塔が数多く残ります。明治末から第二次大戦にかけて軍事施設が多く設置されてきました。
1991年〜1993年頃までには宅地化が進んできていました。

都賀小学校区の音を聞く
<およその規模>約3km四方

<およその位置>
千葉市緑区の平山町、辺田町と鎌取町の一部にあたります。南東の境は、JR外房線で鎌取駅があります。

<過去と現在の状況>
この小学校の一帯は、ほぼ江戸時代の平山村にあたり、平山、辺田にそれぞれ長い谷津田が入り組んでおり、背後に斜面林がある南向きの場所に古くからの集落があります。台地上には、畑と広い林野が広がっていました。1991年〜1993年頃までにはその一部は宅地化され、またゴルフ場になりました。

平山小学校区の音を聞く
1991年〜1993年当時の区画の様子(当時のマップ)と第30回  生態園トピックス展身近な地域の環境調査 -小学校区を例として- (1996年 5月1日〜5月19日) より