生態園の植生・樹木管理
植生とは、「ある場所に生えている植物の集団」のことです。植生は、その土地の自然環境や人のかかわりなどに応じてさまざまです。
千葉の代表的な植生を再現して展示する生態園の各エリアには目標とする植生があり、それに近づけるための植生管理作業を行っています。ただし、生態園ではこれらの作業を最小限にとどめ、できるだけ自然な状態で生態系を見守り育てています。
■生態園の植生管理は調査研究に基づいています
生態園の植生管理の方針は、開園当初から継続している研究員の日頃の観察や調査研究データに基づいています。植生管理に特に関係の深い植物相(フロラ)調査と毎木調査の最近のデータは、下記のリンクからご覧ください。
●西内李佳・天野誠・大野啓一(2024)生態園の植物相(1986~2020年).千葉県立中央博物館研究報告特別号12,221-250.
●尾崎煙雄・西内李佳(2024)生態園における森林群落の約30年間の変化.千葉県立中央博物館研究報告特別号12,251-275.
■生態園管理会議
生態園では、伐採や除草など研究員では難しい作業を専門の業者に委託しています。その業者と、生態園の植生管理・設備管理・教育普及を担当するそれぞれの研究員が、月に一度「生態園管理会議」を行って、作業方針や内容の相談・確認、情報の共有を行っています。
目標植生にふさわしくない植物の除去
生態園の各エリアで目標とする植生は千葉県内の代表的な植生ですが、生態園がある場所(千葉市中央区青葉町)には自然に成立しない、または成立しづらいものがあります。代表的なものは「海岸植生」です。このようなエリアでは、目標植生にふさわしくない植物が侵入してくるため、それらの除去が必要になります。
生態園で行っている作業の一例をご紹介します。
■「海岸植生」の選択的除草
本物の海辺では、潮風などに耐えられる植物しか生えることができません。しかし、本物の海のない生態園では、「海岸植生」エリアの「砂浜」に内陸の植物が侵入してきます。研究員が塩水をまいたり砂を吹き付けたりする実験を行いましたが、いずれも常にやり続けないと効果がなく、結局、不要な植物を1本1本手作業で除去する「選択的除草」がいちばん効率的であることがわかりました。

■鳥散布樹木の間引き伐採
鳥が果実を食べ、中の種子が糞としてあちこちで排泄されることによって植物が分布をひろげることを、鳥散布と言います。特に生態園のような都市部の緑地では、ヒヨドリやムクドリなどによって様々な鳥散布の植物が侵入してきます。
鳥散布の樹木の中でもエノキやムクノキなどは生長すると大木になり、まわりの樹木の生長を阻害します。生態園では、増えすぎたり大きくなりすぎたりした鳥散布樹木を適宜伐採し、目標植生に近づける管理をしています。
外来種の除去
鳥散布(上記参照)で侵入してくる植物の中には、本来千葉県に生えていないものもあります。特に多いのが、シュロとトウネズミモチです。
■シュロの除伐
シュロは、東北南部~九州で野生化しているヤシの仲間です。本来の自生地は九州南部とも言われますが、中国原産説もあります。生態園でも増えすぎて一部が “シュロ林”のようになってしまったため、2022年冬に全域で伐採しました。その後も芽生えなどの除去を続けています。



■トウネズミモチの除伐
トウネズミモチは、中国原産の小高木です。鳥がよく食べる果実をたくさんつけるため鳥を引き寄せやすく、トウネズミモチの増加だけでなくその他の鳥散布植物の増加にも寄与します。生態園では増えすぎないように適宜伐採しています。
目標植生にふさわしい植物の植栽
生態園は、国の畜産試験場だった土地を造成してゼロから生態系を造りました。開園直前に植栽された苗木や、その後侵入してきた樹木が育ち、開園から20~30年ほどですっかり森らしくなりました。しかし、林床(森林内の地表面のこと)に生える低木や草本はまだまだ足りていません。
そこで、各エリアの目標植生にふさわしい植物を選定し、研究員が県内各地で採集してきた種子をバックヤードで育て、園内に植栽する取り組みを進めています。

枯れ木や枯れ枝の除去
生態園では、枯れ木や枯れ枝を餌や産卵場所などとして利用する生きものも、大切な生態系の一員と考えています。そのため、来園者に危険が及ぶ可能性がないと判断された枯れ木や枯れ枝は基本的にそのままにしています。
しかし、園路に倒れそうな枯れ木や、園路に落ちてきそうな枯れ枝は、安全管理のため伐採・剪定しています。枯れ木は、現在見えている様子(樹皮が剥がれていないか、キノコが生えていないか、など)だけでなく、枯れてからどれくらい経っているかということや、樹種の特性などを総合的に判断して、より危険度の高いものから優先的に処理しています。これらの判断にも、研究員の日頃の観察が重要なのです。



