「日本の地衣類(ウェブ図鑑)」のサブコンテンツ
 
剣山の地衣類
剣山はどんなところ

徳島県西部に位置し標高1955mの剣山は,愛媛県の石鎚山(標高1982m)に次ぐ,四国第二さらには西日本第二の高峰です.四国では東部の最も奥部に位置しており,言い換えれば,周囲には広大な森林が広がっています.その一方で,登山口であり舗装道路が通っている見ノ越は既に標高約1400m,そこからは登山リフトで標高1700mの西島まで到達できる手軽さのため,登山入門の山とも言われます.山頂域は四国山地によくあるようにササ原となっていて,天気がよければ360度の眺望が開けています.

lata
剣山の位置.地理院地図(電子国土Web)の白地図を元に作図

lata

山頂から南西(左のピークは次郎岌,じろうぎゅう)~西(右奥は三嶺,みうね)を望む

lata

北側(見ノ越・夫婦池の間)から山頂(正面)方面を望む.ブナ林が広がっている.(右奥は次郎岌)
剣山の植生と地衣類の多様さ

剣山は西日本で最も地衣類相が豊かな山と言って良いでしょう.その秘密は,まず植生の豊かさ多様さにあります.右の地図は,本コンテンツの対象とする地域(薄い緑色の太い線で囲む)を示しています.

山頂への起点となる見ノ越(標高約1400m)はブナ林の真っただ中で,標高1800mの西島の少し下までブナなどの大木が林立する落葉広葉樹林で覆われています.

西島の周辺.また刀掛の松の周辺などではウラジロモミやコメツガが,一の森付近ではシコクシラベが優占する亜高山性針葉樹林が成立しています.

西島から刀掛の松あるいは大剣神社を経て頂上に向かう途上は,ニシキウツギやノリウツギなどからなる低木林(ところどころ疎林となっている)が広がりますが,ここに着生する大型地衣類の種類と量が非常に多いのが特筆に値します.霧のかかりやすい気象条件が,これらの地衣類の生育を可能にしているようです.

lata
剣山と周辺地域.地理院地図(電子国土Web)の標準地図を元に作図

ph

着生が多い低木林(刀掛の松付近)

ph

ウラジロモミの木立(刀掛の松付近)

ph

低木上に多いトコブシゴケ Cetrelia nuda

ph

低木上に多いアオカワキノリ Leptogium pedicellatum
露岩と地衣類

地衣類相の多様性のもう一つの要因は,露出する岩石の種類にあります.頂上付近は平家の馬場という平たい土地で,露岩は少ないのですが,チャートからなる宝蔵石(神社)もありますし,西島(神社)もチャートの大きな露頭です.これに加えて,大剣神社と行場には石灰岩の露頭が現われており,チャート上とは異なる,独特な地衣類相が成立しているのです.

ph

チャートの露頭(頂上近くの宝蔵石,右下は頂上ヒュッテ)

ph

石灰岩の露頭(行場)

ph

チャートなど非石灰岩質の岩上に多いシナノゴケ

Parmelia shinanoana

ph

石灰岩上に特有のクロサビゴケ

Placynthium nigrum

 
●本コンテンツ「剣山の地衣類」と著作権について