調査研究事業
●1.調査研究事業「房総の地衣類誌」
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【内容】千葉県内に分布する地衣類について明らかにし,記録していきます.まず最初の目標は,県内に産する種類のリストを完成させることです.次いで,それぞれの種の分布状況を明らかにすることを目的とします.今後はさらに,分布状況がどのように変化していくかをモニターすることが課題に挙げられます.

●開館直後は「総合研究」として位置づけられていましたが,その後「地域研究課題」とされました.多数の市民研究員,共同研究員にも協力していただいています.

●担当者:原田浩[1989年(平成元年)~],坂田歩美[2018年(平成30年)~]

 
◆◆千葉県産地衣類のチェックリスト
★県内に分布する地衣類について,発表された文献の情報を収集し評価した結果を種名のリストとしてまとめます.開館当時の県内からの記録は114種でしたが,研究を進めた結果,2008年には249種に,2017年末には305種になりました.
 
◆◆県内各地の地衣類相の調査
★地衣類相,つまりある場所に生育する地衣類の種類を調べます.市町村ごとの調査としては,東金市にはじまり袖ケ浦市,富津市,白井市について実施しました.
★東京大学千葉演習林(鴨川市・君津市).当館の重点研究として調査し,その結果を2017年に発表しました.
 
◆◆地衣類の分布調査
★県内における地衣類の種多様性を評価するために調査を行っています.
 
◆◆新種の発表
★2023年9月末までに,千葉県から35新種を発表しました.新種の基準となるタイプ標本は,当館の標本庫(収蔵庫)で,いつでも検査できるように,大切に保存しています.
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★2023.09.勝浦市で採集した標本に基づき,スミツブノリ(Phloeopeccania japonica)を新種発表しました.
★2021.04.大多喜町で採集した標本に基づき,シロオオマルゴケ(Porina pallidocarpa)を新種発表しました.
★2018.12.御宿町で採集した標本に基づき,トゲミゴケ(Monoblastia chibaensis)を新種発表しました.
★2017.12.「東京大学千葉演習林から地衣類の2新種発見」.キヨスミカワキノリ(Leptogium kiyosumiense)とミキノフシアナゴケ(Mazosia japonica)の2新種を発表しました.
★2017.12.プセウドカロパディア チバエンシス(Pseudocalopadia chibaensis)を新種発表しました.
Leptogium
pseudocalopadia
campylidia

新種キヨスミカワキノリ 

Leptogium kiyosumiense

新種プセウドカロパディア チバエンシス 

Pseudocalopadia chibaensis の子器

新種プセウドカロパディア チバエンシス 

Pseudocalopadia chibaensis

のキャンピリディア

megalotremis

新種オオゴマゴケ

Megalotremis chibaensis

◆◆さらに様々な発見
★2022.03.千葉県新産として,オオクロボシゴケ(Pyxine limbulata)とクロウメボシゴケ(Trypetheliopsis yoshimurae)の2種を報告しました.

★2021.03.千葉県新産としてハナゴケ属のヒメヤグラゴケ(Cladonia rappii)を報告しました.

★2020.03.「日本産海岸生地衣類」の研究(「地衣類の分類・多様性に関する研究」を参照)の成果として,大型地衣類とアナイボゴケ科についてまとめ,この中で千葉県産の標本も使用しました.
★2020.03.ヒョウモンメダイゴケ属の一種(リトマスゴケ科)を千葉県新産として報告しました.
★2019.03.ゲジゲジゴケ属(ムカデゴケ科)の2種を,千葉県新産として報告しました.

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●2.調査研究事業「地衣類の分類・多様性に関する研究」

【内容】主に日本産の,分類学的に未解明な,あるいは問題のあるグループについて分類学的に明らかにします.年度ごとに課題名は多少とも変わっていますが,開館当初から実施しています.

 
◆◆日本産の地衣類の新種など
★2021.04.ムニンヒメイワノリ(Lempholemma boninense)を,小笠原諸島の石灰岩上で採集された標本に基づき新種発表しました.
★2019.08.ヨシムラニセゴマゴケ(Anisomeridium yoshimurae)を,高知県産の標本に基づき新種発表しました.
★2019.08.アミヒメイワノリ(Lempholemma polyanthes)を,北海道と高知県産の標本に基づき,日本新産として報告しました.
★2019.08.日本で2例目のニセクボミゴケ(Megaspora verrucosa)を,長野県産の標本に基づき報告しました.
★2018.12,2019.01.岐阜県の飛騨川の河畔の岩上で採集した標本に基づき,カワアカツブノリ(Synalissa fluviatilis)を2018年12月に新種発表しました.このことは2019年1月19日に岐阜新聞に掲載されました.
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◆◆日本の海岸生地衣類の研究
★2021.04.海岸生地衣類のうち痂状のラン藻地衣として,モツレノリ(Pyrenopsis conturvatula)を認め,その形態的な特徴を詳細に示しました.
★2020.12.海岸生地衣類のうち,アナイボゴケ科を除く被果地衣類として6種を認めました.
★2020.03.海岸生地衣類のうちアナイボゴケ科として12種を認めました.
★2020.03.海岸生地衣類のうち大型地衣(葉状地衣と樹状地衣)として19種を認めました.
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◆◆日本の淡水生地衣類の研究
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◆◆日本の石灰岩生地衣類の研究
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◆◆その他の発見
★2019.08.スクルプトルミナ ユンナンエンシス(Sculptolumina yunnanensis)(広義スミイボゴケ属,ピンゴケ科)(中国雲南省産)を新種として発表しました.

★2017.12.グレオヘッピア(Gloeoheppia)を雲南省から中国新産として報告しました.

★2017.12.レプトギウム インシグネ(Leptogium insigne)を台湾からアジア新産として報告しました.

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◆◆「日本の地衣類(ウェブ図鑑)」の制作
★科研費基盤研究(C)(課題番号21K01006)「日本産地衣類の総合的なデータベースの整備とウェブ公開」(2021~2023年度.研究代表者:原田浩)の補助を受けて制作に着手しました.

★2022.6.415種を掲載し公開しました.(その後も,徐々に画像等を追加しています)

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●3.市民研究員・共同研究員の活動

【内容】市民研究員制度が始まってから,地衣類の研究を希望する多数の市民を受け入れています.また,専門的な研究ができる方を共同研究員として受け入れ,共同研究を実施しています.平成30年度は13名の市民研究員と,4名の共同研究員が登録されています.

 
◆◆大ニュース

★2017.06.市民研究員の東あずささんは,海岸の岩場に生育するスミイボゴケ属を研究し,ハマスミイボゴケ(Buellia yoshimurae)を新種発表しました.

★2014.09.共同研究員の坂田歩美さんは,秋田県立大学から博士の学位を授与されました.坂田さんは2008年から市民研究員として地衣類の研究を始め,2009年から共同研究員としてリトマスゴケ科を中心に研究していました.
 
◆◆最近の話題
★2021.04.綿貫攻さん(共同研究員)等は,日本産の広義スミイボゴケ属(Buellia)のうち樹皮着生性のコスミイボゴケ属(Chrismofulvea)の分類を検討し,2種を認めました.
★2020.12.木下靖浩さん(共同研究員)等は,日本産のレプラゴケ(Lepraria cupressicola)の実体について明らかにしました.

★2020.03.吉川裕子さん(共同研究員)・泉宏子さん(市民研究員)等は,北限となる群馬県のフクレヘラゴケ(Thysanothecium scutellatum)を発見し,報告しました.

★2020.03.市民研究員の田中慶太さんは,長崎市滝の観音の地衣類相を明らかにし,報告しました.多くは,長崎県から40年以上記録のなかった種でした.

 

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●4.全体を通して

◆◆論文等執筆リスト

   
  原田浩:

<2019年~><2009~2018年><1999~2008年><1989~1998年>,(参考<1986~1988年>