当館の照屋清之介 研究員が参加した館山湾における貝類のドレッジ調査*の成果が、「千葉県立中央博物館研究報告 自然科学」第17巻第2号に掲載されました。水深2.9〜79.2 mの海域で実施された調査により、34科60種の貝類が記録されました。その中には千葉県初記録種や分布北限を更新する種も含まれており、房総半島沿岸の生物相の理解を深める重要な成果となりました。
調査の背景と成果
本調査は、お茶の水女子大学湾岸生物教育研究所の調査船「保坂丸」および「シースター」を用いて、館山湾内の19地点で実施されました。水深2.9〜79.2 mの範囲から採集された貝類標本は、分類・同定が行われ、千葉県初記録種としてヒメフロガイ(Naticarius excellens)やナガイトカケ属の一種(Amaea laidlawi)など5種が確認されました。また、これらの種の中には分布北限を更新するものも含まれており、地域の貝類相の再評価に新たな知見を提供するものです。
本成果は、館山湾の生物多様性の理解を深めるとともに、今後の長期的なモニタリングや自然環境の影響評価においても重要な資料となることが期待されます。
*ドレッジ調査:大きな金属製のカゴのような採集具を海底に下ろし、船でゆっくりと曳くことで、海底の砂や泥と一緒に貝などの生きものを掬い上げる調査のこと
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