イソギンチャクの新種を報告しました

イソギンチャクの新種コビトセイタカカワリギンチャクを報告しました

概要

 セイタカカワリギンチャクは、Dofleinが1904年に相模湾で採集した標本に基づいてWassilieff (1908)によって記載されたイソギンチャクであり、本種の属するSynhalcurias属は世界でこの1種しから知られていませんでした。しかし、今日まで本種の詳細な形態情報は十分に理解されているとは言えない状況であり、属の妥当性や種の識別形質などは曖昧でした。このため、ミュンヘン動物学博物館に保管されている本種のタイプ標本を調査するとともに、日本各地で採集された本属の新規標本を比較検討しました。
 この結果、小笠原弟島近海水深157 m及び奄美大島近海水深315 mから得られた標本は、セイタカカワリギンチャクとは異なる未記載種であることが判明し、これをコビトセイタカカワリギンチャクSynhalcurias kahakuiとして新種記載しました。また情報の不足していたセイタカカワリギンチャクについても、タイプ標本(新種を発表する際に使用された標本)の調査結果及び新規標本から得られたデータに基づいて再記載を行いました。また,これら2種の形態形質に基づいてSynhalcurias属の特徴となる情報を更新したうえで、属の妥当性を確認しました。
 この結果は国際学術雑誌Zootaxaに2021年10月8日付で公表されました。
 なお、当館にはコビトセイタカカワリギンチャクのパラタイプ標本2点が所蔵されています。

論文タイトル

Takato Izumi & Kensuke Yanagi (2021) Description of the second species of Synhalcurias Carlgren, 1914, Synhalcurias kahakui sp. nov. (Actiniaria: Actinernidae) with redescription of S. elegans (Wassilieff, 1908). Zootaxa 5048(4): 561–574, https://doi.org/10.11646/zootaxa.5048.4.5

論文著者

泉 貴人(琉球大学特別研究員・当館共同研究員)
柳 研介(当館主任上席研究員)

 

ミュンヘン動物学博物館に保管されているセイタカカワリギンチャクのシンタイプ標本

 

本研究はJSPS科研費JP17J03267(泉)の助成及び藤原ナチュラルヒストリー振興財団第13回学術研究助成(柳)を受けて行われたものです。

このページのお問い合わせ先
海の博物館