当館研究員の執筆論文が「Zoological Science Award」を受賞しました!

 Zoological Science Awardは、日本動物学会が発行する学術雑誌「Zoological Science」に掲載された論文のうち、 特に優れた研究に対して贈られるものです。
Zoological Science Award (日本動物学会ウェブサイト)

 この度、2019年度に掲載された論文に対して選考が行われた結果、2019年12月に掲載された当館共同研究員で東京大学大学院の泉貴人氏(現琉球大学・ 日本学術振興会特別研究員)と当館の柳研介主任上席研究員、鹿児島大学国際島嶼教育研究センターの藤井琢磨博士、美ら海博物館の東地拓生氏、国立科学博物館の藤田敏彦博士らによる論文「Redscription of Synactinernus flavus for the fist time after a century and description of Synactinernus churaumi sp. nov. (Cnidaria: Anthozoa: Actiniaria). Zoological Science 36: 528-538」の受賞が決定しました。
2020年度 Zoological Science Award 授賞論文の決定について (日本動物学会ウェブサイト)

 この論文のなかで新種として発表されたチュラウミカワリギンチャク Synactinernus churaumiは、美ら海水族館で飼育が行われていた個体に基づいて記載されたものです。新種を発表する際には、近縁種等と比較して、これまでに知られているどの種とも異なることを確かめる作業を行います。 しかし、これらの近縁種が新種として発表されたのが19世紀終わりから20世紀初頭にかけてであり、当時記された形態学的な特徴だけでは種を識別することが難しかったこと、これらが深海に生息する種類であり追加標本を採集することが困難だったことなどから、その分類は大変混乱していました。 そのため、チュラウミカワリギンチャクが新種であることを確認するためには、これまでの既知種についてDNA解析を含めた詳細な検討が必要でした。当館研究員は、過去に新種として発表された近縁種のタイプ標本(新種発表に使用された標本)について、それらが所蔵されているウプサラ大学進化博物館・ルンド大学動物学博物館(スウェーデン)やロンドン自然史博物館(英国)、コペンハーゲン大学動物学博物館(現デンマーク自然史博物館/デンマーク)などに赴き、これらの形態学的な特徴を再検討するとともに、それらが当時採集された場所において積極的に調査を行い、タイプ標本と形態が一致する標本の採集に努めました。このような研究によって、正確に同定された生きた状態の標本に基づいてDNA解析を行うことが可能となりました。その結果、チュラウミカワリギンチャクが含まれるグループ(ヤツバカワリギンチャク科)の分類を再整理したうえで、本イソギンチャクを新種として発表することができました。新種の検討に使われたタイプ標本の一部は、当館に所蔵されています。
 なお、チュラウミカワリギンチャクは現在、沖縄県の美ら海水族館で飼育展示されている様子を見ることができます。
美ら海水族館お知らせ欄 (美ら海水族館ウェブサイト)



標本調査が行われた博物館のひとつ(ウプサラ大学進化博物館/スウェーデン)

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海の博物館