当館研究員がイソギンチャクの新種を発表しました。

キノコギンチャクは新種だった ~鴨川産の標本が鍵に!~

概要

 日本の温帯域の浅海に生息するイソギンチャクの一種「キノコギンチャク」は、これまで地中海産の標本をもとにした学名が付けられていました。今回、地中海産のものとは別種であることがわかり、鴨川産の標本をもとに新種として発表しました。和名は「キノコギンチャク」がそのまま使われ、研究に使われたタイプ標本は分館海の博物館に保存されています。
 また、1908年に相模湾産の標本をもとに一度は新種として発表され、その後地中海産のキノコギンチャクと同種とされていた「チビナスイソギンチャク」についても研究をおこないました。その結果、地中海産の種とも日本のキノコギンチャクとも異なる別種であることがわかり、属名を変えた上でチビナスイソギンチャクを復活させることになりました。
 今回の研究は、当館共同研究員の泉貴人博士、当館主任上席研究員柳研介博士、国立科学博物館動物研究部無脊椎動物研究グループ長の藤田敏彦博士の3名により行われました。イソギンチャクの学名は100年以上前に付けられているものも多く、普通に見られる種類の分類にも多くの混乱が見られます。種の定義が明瞭で安定していないと、分布や生態などの研究活動だけでなく、環境調査や各種の自然保護活動なども正しく進めることができません。生物の分類は生物学の基礎を固める学問ということもできるのです。

論文タイトル

Comprehensive revision of Anemonactis (Cnidaria: Anthozoa: Actiniaria: Haloclavidae) in Japan: reestablishment of Anemonactis minuta (Wassilieff, 1908) comb. nov. and description of Anemonactis tohrui sp. nov.

論文著者

泉貴人(琉球大学特別研究員/当館共同研究員)
柳研介(当館主任上席研究員)
藤田俊彦(国立科学博物館動物研究部海生無脊椎動物研究グループ グループ長)

掲載誌

Marine Biodiversity 50:73(電子版) 2020年8月19日付
DOI https://doi.org/10.1007/s12526-020-01085-5

※本研究の一部は、科学研究費の助成(泉:JP 17J03267;柳:JP2544022)及び笹川科学研究助成(泉:no. 27-528)を受けて行われたものです。

 

キノコギンチャクのホロタイプ標本
新種発表に使われたキノコギンチャクのホロタイプ標本(生時に水槽内で撮影したもの)

 

 

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海の博物館