国内初記録のイシサンゴの仲間
      
         概要
      
 ハナサンゴ科ナガレハナサンゴ属は、軟体部の一部を骨格から外に大きく伸長させるイシサンゴ類の一群です。本属は、骨格のみでの分類が難しく、長く伸長した軟体部の形状が分類形質として重要視されます(一般的に、イシサンゴ類の分類では骨格の形態が重要視され、軟体部の形態はあまり使われません)。国内からは、これまでに3種の分布が知られていましたが、本研究でツツナガレハナサンゴ(新称)が宮古諸島と奄美諸島から、またツツコエダナガレハナサンゴ(新称)が沖縄本島および奄美諸島から確認され、日本産の本属は5種となりました。同じくハナサンゴ科に属するオオナガレハナサンゴ属はオオナガレハナサンゴ属1種のみが知られ、その分布の局所性および希少性から、環境省によるレッドリストでは絶滅危惧II類(VU)に指定されています。これまで、国内では九州以北からのみ知られていましたが、本研究で沖縄本島および奄美諸島から確認され、分布域が拡大しました。
       上記3種が発見された環境は、これまでイシサンゴ類の調査があまり行われてこなかった内湾の砂泥底やメソフォティックと呼ばれる水深30 m以深の薄暗い深場が主でした。イシサンゴ類の分布や生物多様性を理解するうえで、今後このような環境での調査研究を進める必要性があると考えられました。
         論文タイトル
      
New Distributional Records of Three Species of Euphylliidae (Cnidaria, Anthozoa, Hexacorallia, Scleractinia).(ハナサンゴ科イシサンゴ類2種の国内初記録および1種の琉球列島初となる分布記録)
         論文著者
      
藤井琢磨(鹿児島大学)
      北野裕子(国立環境研究所)
      立川浩之 (当館主任上席研究員)
         掲載誌
      
Species Diversity, 25: 275-282. (2020)

      図1. 国内初記録となった、左:ツツナガレハナサンゴ(新称)および右:ツツコエダナガレハナサンゴ(新称)の群体(奄美大島瀬戸内町手安,藤井琢磨撮影)

      図2. 琉球列島初記録となった、オオナガレハナサンゴの群体(奄美大島瀬戸内町手安,藤井琢磨撮影)
なお、本論文はオープンアクセスで公開されていますので、どなたでも自由に閲覧できます。興味のある方は下記よりご覧ください。
      [J-STAGE 科学技術情報発信・流通総合システム]
      https://www.jstage.jst.go.jp/article/specdiv/25/2/25_250220/_article/-char/en
      ※J-STAGEは国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) が運営する電子ジャーナルプラットフォームです。


 
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                        