房総の海

房総の海房総半島を取り囲む海は、内湾と外洋、浅海と深海、暖流と寒流といった対照的な要素を併せ持つ、多様な環境から成り立っており、これらの環境によって、さまざまな種類の生きものたちが育まれています。

このコーナーでは、房総の海を、東京湾内房外房銚子・九十九里浜の4つの海域に分けて紹介しています。 

東京湾

富津岬の先端と三浦半島観音崎とを結んだ線より北側の海域を東京湾といいます。
東京湾は、三方を陸で囲まれ、外海と通じる浦賀水道の幅も狭いため、閉鎖的で穏やかな海となっています。

盤州干潟東京湾の沿岸には、かつては広大な干潟が形成され、河川水が運んでくる豊富な栄養分によって多くの生きものがはぐくまれていました。

内房

富津岬から洲崎までの、2つの岬にはさまれた地域を内房といいます。
内房周辺の海は、夏から秋にかけて、黒潮の影響を直接受けるために水温が比較的高くなります。
また内房は、外洋水の影響が強い場所ですが、直接外洋に面しているわけではないために、波あたりは穏やかな海域となっています。

ニホンアワサンゴ群落内房の海では、暖かい黒潮の影響によって、日本の温帯域に広くみられる生きものだけではなく、華やかな南方系の生きものも見ることができます。
館山湾をはじめとする内房各地の沿岸では、造礁サンゴ(褐虫藻が共生しているサンゴ)の仲間が生息しています。

外房

洲崎から太東崎に至る太平洋に面した地域を外房といいます。
この地域は、海岸線が岩礁と砂浜から構成されている点で内房とよく似ていますが、外洋に面しているため波あたりが強く、潮通しがよいのが特徴です。

カジメ海中林外房沿岸は、沖合を流れる黒潮の影響によって温暖な気候となっています。
海中には、コンブの仲間で暖かい海にすむカジメが繁り、魚などのよい隠れ場所になっています。

銚子・九十九里浜

太東崎から屏風ヶ浦に至る長大な砂浜海岸を九十九里浜といいます。海の中には海岸と同じような砂質の海底がつづき、一帯は傾斜が緩やかな大陸棚となっています。
九十九里浜より北に位置する銚子周辺は、主に岩礁性の海岸からなり、冷たい親潮の影響が現れる場所です。

犬吠埼の磯九十九里浜周辺の海域には、水深の浅い海底が広がり、かつ太平洋の荒波にさらされているため、海底は泥が少なく砂に富んでいることが特徴です。
一方、銚子の東端となる犬吠埼では沖合で黒潮の流れが東へ向きを変え、親潮系の海水がここよりも南下することがほとんどないため、この地は南方系と北方系の海の生きものの分布を分ける重要な地点だと考えられています。