安房の農家

安房の農家

屋敷構

安房の農家江戸時代後期に建てられた南房総市増間(旧安房郡三芳村)の平野家をモデルとして伝統的な工法で再現しています。
敷地は1,120㎡、主屋・馬小屋・灰小屋の3棟で構成されています。主屋は、安房地方にみられる別棟造り(分棟型)と呼ばれる造りをしています。各建物の内部からは、「梁」「棟木」「母屋」や竹を縦横に組んで茅屋根を受け止める「小屋組」などを見ることができます。
※別棟造り(分棟型)とは
棟(建物)は分かれているが、それぞれの軒が接して空間的に一つのものとして使われる形式を指します。安房の農家は畳敷きや板敷きの部屋とかまどを持つ「だいどころ」が別棟で、「ろうか」呼ばれる部分でつながっており、全体で1軒の居住空間が構成されています。

 

主屋

安房の農家主屋2主屋は茅葺きで、広さは185.25㎡です。床張りのある棟(写真左側)はきたでい・うわでい・ざしき(座敷)・かって(勝手)・なんど(納戸)・しもべやで構成され、別の棟(写真右側)はだいどころと呼ばれる土間で、一部に中二階が設けられています。この二つの空間(棟)は幅約2mのろうかと呼ばれる土間でつながっています。

 

土間

安房の農家だいどころ平野家で「だいどころ」と呼ばれる土間は、かまどを使って煮炊きするための炊事場、米などの収納場所(籾倉)の他、農作業やわら製品などの作業場として使用するため、床をはらずに地面のままの広い空間(約26.5㎡)になっています。流し場や水甕などはろうかに、また、土間の右奥には臼が地面に埋め込まれた踏み臼が設置されています。三連のかまどでは毎日ご飯を炊いたり、味噌や醤油を作るための豆を煮たりしました。

 

かって(勝手)

安房の農家勝手主に食事をとる板敷の部屋で、イロリが設けられています。縄ないやワラゾウリ作りなどの手仕事も行えます。

 

ざしき

安房の農家ざしき板敷きの床ですが、ざしきと呼ばれています。仏壇の隣は引出し付の奥行の浅い板戸があり、その上が神棚になっています。

 

客間

安房でいうわでい・きたでい 「でい」とは客間を意味する安房地方の言葉で、畳敷きで接客に使われます。きたでいは床の間を設えられた部屋で、家の中でもっとも格の高い部屋に当たります。「でい」への出入り口であるげんかんの板戸はざしきとは異なる特別の設えです。

 

納戸

寝室として使う板敷きの部屋で、衣類等収納用の長持、布団などが置かれています。納戸の隣に物置などに使われる「しもべや」と呼ばれる板敷きの部屋があります(現在は当館で製作した竹製品を収納しています)。

 

馬小屋

馬を飼育する部分と納屋に分かれています。平野家では牛を飼っていたと言われています。

 

灰小屋

堆肥を作って貯蔵したり、農具などを収納する建物です。堆肥作りに人糞が盛んに用いられたことから、灰小屋には便所が備えてあります。