千葉県産エビ類のタイプ標本

千葉県産エビ類のタイプ標本

 1999 (平成11) 年の開館以降、当館では「房総半島の海洋生物相とその特徴」の研究テーマを掲げ、千葉県の大部分を構成する房総半島の海の生きものの顔ぶれを調査してきました。房総半島に分布していることが明らかになった種類の中には、標本を採集した時点で学名が与えられておらず、のちに新種として記載されたものもあります。この時に千葉県産の標本が学名の基準となる「タイプ標本」として指定されました。当館では、次のようなエビ類の標本が千葉県産のタイプ標本として大切に保管されています。ここでは、それらのタイプ標本を時系列順に紹介します。

 

ハクセンアカホシカクレエビ Ancylomenes kobayashii (Okuno and Nomura, 2002)
 主に水深 20〜60 m の砂泥底に生息する刺胞動物・スナイソギンチャク Dofleinia armata に共生するテナガエビ科のエビです。千葉県立中央博物館の英文研究報告(当時)『Natural History Research』第7巻1号 (2002年刊行) で新種 Periclimenes kobayashii として記載された際に、2001年6月に館山で採集されたオス1個体 (CMNH-ZC 00538) がパラタイプに指定されました。なお、静岡県伊東産のオスのホロタイプ (CMNH-ZC 00536) も当館に保管されています。


ハクセンアカホシ
ハクセンアカホシカクレエビのパラタイプ(館山産)
 

アカホシカクレエビ Ancylomenes speciosus (Okuno, 2004)
 水深 10〜20 m の岩礁に生息するイソギンチャク類を宿主とする共生性テナガエビ科の一種です。日本動物学会の出版する学術雑誌『Zoological Science』第21巻 (2004年刊行) で新種 Periclimenes speciosus として記載された際に、2002年7月に館山で採集されたオス (CMNH-ZC 01666) がホロタイプに指定されました。他に、1996年から2001年にかけて館山で採集されたメス3個体がパラタイプに指定されています。


アカホシ
アカホシカクレエビのホロタイプ(館山産)
 

コモレビアカモエビ Lysmata lipkei Okuno and Fiedler, 2010
 潮間帯から水深 20 m までの岩礁に生息するヒゲナガモエビ科のエビです。オランダの学術論文集『Crustaceana Monographs』第14巻 (2010年刊行) で新種として記載された際に、2001年12月に勝浦地先で採集されたオス (CMNH-ZC 02380) がホロタイプに指定されました。また、同年10月に同じ場所で採集されたオス1個体 (CMNH-ZC 00660) がパラタイプに指定されています。

 

コモレビ
コモレビアカモエビのホロタイプ(勝浦産)
 

シノノメスベスベオトヒメエビ Odontozona arbur Saito, Okuno and Anker, 2017
 水深 20 m 前後の岩礁に生息する小型のオトヒメエビ科のエビです。日本甲殻類学会の出版する学術雑誌『Crustacean Research』第46巻 (2017年刊行) で新種として記載された際に、2001年9月に館山で採集されたメス1個体 (CMNH-ZC 02498) がパラタイプに指定されました。インド・西太平洋熱帯域に広く分布しており、分布の北限域となる千葉県では、今のところこの1個体しか知られていません。


シノノメ
シノノメスベスベオトヒメエビのパラタイプ(館山産)