第11回 神幸軍神祭御船遊之図
利根川下流に位置する佐原。水郷地帯として知られるこの地に、人々の信仰を集めてきた香取神宮がある。ここには十二年に一度の午の歳に行われる「式年神幸祭」が伝えられている。香取神宮の祭神「経津主大神(ふつぬしのおおかみ)」が天照大神の命を受け、国土平定のために行った東征が式年神幸祭の由来とされ、鎌倉時代初期から行われていた。
四月十四日、香取神宮境内で式年神大祭が催され、久米舞が奉納される。翌十五日、神輿が神宮を出発する。津宮で御座船に奉安され、花火を合図に利根川を渡る「御船渡りの神事」がおこわなれる。御座船が目指すのは鹿島の神が待ち受ける牛ヶ鼻沖。鹿島神宮の祭神「武甕槌大神(たけみかづちのおおみかみ)」は香取神宮の祭神とともに東征した神である。御座船はやがて鹿島の迎船と出会い、両神が十二年ぶりに再会する「御迎祭」が船上で執り行われる。
紹介する資料は式年神幸祭のうち御船渡りの様子を描いたものである。中央に見える大きな船が御座船。曳き船隊に先導されながら鹿島の神が待つ牛ヶ鼻を目指す。利根川を埋め尽くさんばかりの数多くの供船を従える勇壮な姿は東征を彷彿させるものである。
十二年に一度、豪華絢爛たる大絵巻が繰り広げられるのは平成十四年の春である。
(学芸課 島田 洋 / 2001年)
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