飯沼いいぬま行人ぎょうにん講(市原市)

調査時期:2011年5月、6月

写真

飯沼行人講では、1・5・9月の年3回、ぎょうを行い、親梵天1本・子梵天2本を供養塚に立てます。また集落の入り口3カ所に辻梵天を立てます。
山へ行く時も3本の梵天を作ります。

梵天の作り方

写真
支柱の竹の先を削り藁ヅトを挿す
写真
型に合わせて垂れ紙を切る
写真
「カンザシ」
写真
幣束、サカキ、「カンザシ」を挿す
写真
垂れ紙を紐に挟む
写真
「ゴオ(牛王)」を巻く
写真
「カゴ」を組む

手順

  1. 藁ヅトの切り口を上にしてマダケの支柱を挿す。藁ヅトに半紙を巻き、上からもかぶせて紐で縛る。
  2. 垂れの紙は、1本の梵天について石州の半紙を10枚使う。1枚を半分に切って型にあわせて切り、2枚ずつ頭をひねっておき、紐に挟み込んで垂れ下げる。
  3. 親梵天にだけ、さらに赤・黄・緑・青・紫の色紙をやはり半分に切って作った垂れ紙を各2枚、白い垂れ紙の上から挿しこむ。
  4. 梵天の頭に幣束1本、サカキ、「カンザシ」9本を挿す。「カンザシ」のうち3本は上部を黒く塗り、残り6本には小さな三角の紙をつける。
  5. 親梵天の竹の支柱に半紙を巻く。これを「ゴオ」と言い、昔は三山から受けた牛玉ごおうというお札を巻いた。
  6. 頭にサカキ、三角1本、「花」2本を挿す。
  7. 竹ヒゴを組んでカゴを作る。親梵天と子梵天を供養塚に立てる際、竹を組んだ「かご」を結びつけ、3本1組にする。

現在の行事と梵天

写真
供養塚に梵天を立てる
写真
供養塚の大日如来像は寛文3年(1663)銘

龍昌寺境内に行屋がある。現在は公民館になっており、その一室を行屋として使用している。祭壇には三山の掛け軸と大日如来像を祀る。「神仏一体の神様」で、拝礼時には線香を立て、二礼二拍手一拝を行う。

正五九月の月末の日曜日にそれぞれ正月行、五月行、九月行を行う。3回ともに親梵天1本、子梵天2本、辻梵天3本の計6本の梵天を作る。親梵天、子梵天は3本を1組として供養塚に立てる。辻梵天は悪いものが入らないよう、集落の入り口3カ所に立てる。

三山登拝の近況と梵天

宿坊は養清坊。年1回、3月ころに来訪がある。 三山登拝は数年に一度。前回は平成20年に40名で行った。うち新行が29人、贈冠(オクリカン・白衣とお金を持っていってもらうと、実際には行かなくても登拝したことになる)が2名だった。終戦のころ40数軒だった集落が現在では900軒をこえており、参加者を募集するときは新住民にも声をかけている。登拝参加後に、講に入る人もいる。 登拝前に、梵天3本を行屋の前に立て、山から戻ると「お山」(村はずれの供養塚)へ持っていく。前回は登拝の翌年3月に、石を立てて腰梵天を納める「梵天納め」を行った。供養塚の大日如来石像は寛文3年(1663)銘がある。

行人の葬式と梵天

行人の葬式には白い梵天を3本作る。また3尺くらいの竹の杖を作り、墓石の後ろに立てる。「葬式行」という。