野牛やぎゅう出羽三山行人会(茂原もばら市)

調査時期:2011年5月、12月

写真

野牛出羽三山行人会では、1・5・9・12月に講の集まりがあり、12月に梵天を1本作ります。川のほとりに立て、三山の方角に向かって拝みます。
梵天はその後1年間、行堂の祭壇にお祀りします。

梵天の作り方

写真
竹串の元を削る
写真
左右のシダを合わせ、上に四角の紙を被せた幣束
写真
幣束の紙を挟んだ竹串の上部を、こよりで縛る
写真
前年の幣束を下段に移し、新しい幣束を上段に

手順

  1. マダケの支柱に藁を結わえ、折り曲げて藁ヅトを作る。1本の支柱に2つの藁ヅトをつける。藁ヅトの切り口についての決まりはないが、下に作っている。
  2. 幣束を7本作る。2つの藁ヅトのうち、上の藁ヅトに新しい幣束7本を挿す。前年の幣束7本を下の藁ヅトに挿す。

現在の行事と梵天

写真
川のほとりに梵天を立てる
写真
三山の方角に拝礼
写真
祭壇前で祈祷を行う
写真
1年間、梵天を祭壇のわきに祀る

三山に登拝した人たちの会を行人会といい、現在31名(22軒)。そのうち年輩者8名で八日講会を組織し、行堂で祈祷行事などを行っている。

八日講は平成22年まで毎月行っていたが、高齢化し、当番に負担がかかることから、正五九と十二月の年4回となった。正月は大進坊の来訪に合わせて初祈祷と総会、懇親会を行い、5月と9月は行堂で祈祷と懇親会を行う。12月には行堂の祭壇に安置する三社御幣(三山のご神体)と梵天1本、しめ縄などを作る。このときの梵天には藁ヅトを上下2段につけ、上には新しく作る7本の幣束を挿し、下には前年の幣束7本を移す。謂れは不明。梵天を行堂近くの小川のほとりに立て、月山の方角を向いて白装束で祈祷を行う。また4月には八日講が主催する花見の小旅行も行っている。

三山登拝の近況と梵天

三山へはおよそ2年おきに行く。30軒ほどの小さな地区なので、近年では台田地区といっしょに登拝している。男性のみの参加で宿坊は大進坊。毎年1月に来訪があり、その日に正月初祈祷と新年会を行っている。

山へ行く前に梵天を1本作る。藁ヅトの上に3本の幣束を立て、下には山へ行く人と八日講(年輩者)の人数分の幣束を挿す。月山へ登る時間にあわせて、先輩の行人が行堂の祭壇で梵天とともに安全を祈願し、また留守の間、家族がドウロクジン参りをして無事を祈った。山から帰ってくると梵天に挿した幣束を神社の記念碑の周りに立てる。

行人の葬式と梵天

写真
葬式に作った梵天(講提供写真)
写真
墓地に立てた5本の梵天(講提供写真)

行人の葬式では、八日講の会員が主となって朝から行堂に集まり、5本あるいは3本の梵天を作る。1本は長く、ほかは1尺くらい小さく作る。幣束はそれぞれに3本ずつ挿す。墓石の後ろに大きな梵天を立て、4本で(全5本の場合)墓地を囲むようにし、割竹で結わえる。正面には日の丸の丸扇を立てる。白装束の正装で拝む。