上高根 かみたかね 敬愛 けいあい 講社(市原市)

調査時期:2007年12月/2008年7月

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上高根敬愛講社では、毎月、八日講の集まりがあります。梵天は、7月の 土用行 どようぎょう で作ります。また山へ行く時には、 初めて山に行く「新行」の人数分の白梵天と、2回目以上の人全員分として1本の色梵天を、行屋の前に立てます。下山後には梵天を村はずれの供養塚に移し、新行が受けてきた腰梵天を納めます。

梵天の作り方

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切込みを入れた紙を巻く
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3段にかけた紐を結ぶ
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垂れ紙を下げ、飾り切りをした紙を被せる
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頭に飾り切りした紙を被せ、幣束1、三角2、サカキを挿す

手順

  1. 紙は石州半紙を使う。藁ヅトは切り口が上になるようにして、4枚に切れ込みを入れた紙を巻く。
  2. 3段にかけた紐を「あわび」(あわじ)・「花結び」にし、網を編んで「袈裟」を作る。
  3. 石州4枚を四つ折りして切った16枚の垂れ紙を3組下げる。色梵天は白の垂れ紙16枚を2組と赤・黄・緑・紫・白5色の色紙を半分にして切ったものを各色2枚、10枚1組を下げる。
  4. 藁ヅトの上に飾り切りをした紙をのせ、赤の幣束1本と白三角(煙のような切れ込みあり)2本を挿す。
  5. マダケの支柱を挿し、中段に切れ込みを入れた半紙を巻いてサカキを挿し、紐結びを作る。
  6. 葬式の3本の梵天は芝を積んだ壇に立て、竹のヒネで1組に結わえ、ヒネの交叉部に小幣束(赤・青)を挿す。また、支柱の元に割竹3本ずつを挿す。

現在の行事と梵天

行屋は江戸時代中期に建てられたもので、祭壇には大日如来坐像と不動明王、阿弥陀如来、弘法大師坐像などが祀られている。

毎月8日(近年は毎月第一日曜日)に八日講、20日に年配者だけの集まりとして二十日講を行っている。二十日講は昭和47年ころに始まったもの。2月3日に節分会として魔よけの札を摺り、講員に配る。7月土用丑の日は土用行(川垢離)を行い、行屋脇の水場に色梵天を1本立てる。この日はオツカ掃除や三山登拝の安全祈願も行う。かつては2月の大寒のころに寒行があったが、現在は行わない。

三山登拝の近況と梵天

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登拝前の梵天。2回以上参加の全員分の色梵天を中心に、両脇に新行2人の色梵天を立てる。

三山に参拝した行人の集まりを敬愛講という。人数が揃えば毎年でも参拝に行くため、何度でも行く人が多い。男性のみ。宿坊は長く西蔵坊だったが平成20年より養清坊。毎年3月ころに 檀那廻 だんなまわ りに来る。

登拝前には新行の人数分の白梵天と、2回目以上の全員分として1本の色梵天を作り、行屋の三山碑の前に立てて安全祈願をし、また、神社にも参拝する。行屋の梵天には、毎朝留守家族が水をかけにくる。下山後は1週間くらいのうちに腰梵天のオツカ納めと八社参りを行う。これは、村はずれのオツカ(供養塚)に並ぶ供養塔のうち正面の新しい石に行屋の梵天を移し、新行が受けてきた腰梵天を納め、その後、近隣8カ所の行屋を廻るもの。かつては腰梵天がまとまると梵天供養を行い、新たな石を立てて納めたが、今は塚に納める場所が設けてあり、行くたびに納める形になっている。

行人の葬式と梵天

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墓地の後ろに立つ葬式の梵天(提供写真)
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葬式の梵天は芝壇の上に立て、3本を一緒に結わえる。元に割竹を3本ずつ立てる。(提供写真)

葬式の前日に行人が行屋に集まり、葬式梵天を作る。1本の色梵天(オヤ)と2本の白梵天でひと組とし、葬式当日に、埋葬に先だって墓に立てる。

梵天や行事の変化

立野晃の記録(1981)によれば、藁ヅトの上にオカシラ1、サンカク3、カラボウ3を挿し、支柱の中ほどにはリョウブと呼ばれる幣束を2本括りつけるとある。また冬行、土用行では1本、三山登拝前にはひとり1本、また葬式では3本の梵天を作るとある。色は特に記されないが、どれも白一色だったように読める。